昨年、快適な自転車ライフを提供する「株式会社あさひ」が、500店舗を達成した。
達成記念として企画されたコンテストが、これまでの「あさひ」の発展を象徴する企画だと感じた。
それは、
あったらいいな、こんなサービス
あったらいいな、こんなお店
あったらいいな、こんな自転車
募集企画だ。
実現可能、不可能を問わず、「欲しいサービス・お店・自転車」を大募集したのだった。
この記事を見ながら、以前、TV番組「カンブリア宮殿」に紹介されたことを思い出した。
創業時の一般的な自転車販売といえば、売りっ放しで、故障しても専門スタッフもいない状況だったという。
そんな中、創業者の下田進社長が拘ったのは「サービス人材力」だった。
信頼される自転車のプロを育て、「売り手」の都合を排した「顧客目線」の店づくりに邁進したのだった。
他社が売った自転車も修理し、修理料金も店内に掲示している。
「地域のお客さまにとって、なくてはならない店になることが大事」と下田社長は語っていた。
さらに、「顧客目線のあさひ」の特徴として、「あさひ」独自のPB(プライベートブランド)自転車の開発と販売が挙げられる。
例えば、ビジネスマン向けには、革靴でも滑らない樹脂をつけた「ペダル」、ビジネスカバンを入れやすくするための横幅の広い「カゴ」等のついた自転車を開発、販売している。
顧客に寄り添い、顧客のニーズを知り尽くす「顧客目線」のオリジナル自転車そのものだ。
下田社長は、「大切なのは、売上げより何よりも来客数」とも語っていた。
「顧客にとって本当の満足とは何か」を追求する姿勢の大切さを学べる言葉だった。
以前、「KPIマネジメント(楠本和矢著/すばる舎)」を読んだ。
この書籍には、「あさひ」が事例として紹介されている。
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、「重要業績評価指標」と言われる。
著者は、KPIの定義として「対象となる事業活動において、定めた目標の達成度合いや、目標達成に向けた主要な活動の進捗状態を測るための定量的な指標」と語る。
つまり、「目標の達成に向けて、集中する点を明確にして、アクションを起こし、その進捗を測るためのもの」だ。
そのKPIに「あさひ」は「サンキュー点検の登録者数を設定している」と記されていた。
390円で自転車のメンテナンスを定期的に受けられるサービスを導入し来店いただく。
新規の顧客獲得よりも、既存の顧客の「安心と信頼」「本当の満足」に集中したものだ。
結果として事業の発展につながっている。
「来客数への拘り」「本当の満足の追求」は、しっかりとKPIに反映されている。
あらためて、「あさひ」の発展のポイントは何か、を考えた。
「徹底した顧客目線」に立つことができるのはなぜだろう。
そうか。
「あさひ」のVision(経営理念)にも、こう記されている。
「自転車を通じて世界の人々に貢献できる企業を目指します。
その企業目的に賛同し、参画するすべての人々が、豊かな人生を送れることを目指します」
と。
「あさひ」は、Visionの飽くなき追求にワクワクしているのかもしれない。
だからこそ、徹底した顧客目線の実践を楽しめているのかもしれない。
Visionを掲げる人や企業は多い。
でも、「あさひ」までのVisionへの拘りは、少ないかもしれない。
リーダーの想い、情熱が、社員みんなの想い、情熱へと伝播しているようだ。
自分に置き換えてみる。
「心からの願い、本当に実現したいこと」を意味するVision。
そもそも、今、自分の掲げているVisionは、「本当のVision」なんだろうか。
新年がスタートした今、あらためて見つめ直したい、と思う。