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プロ野球 ビール立売スタッフ「売上トップ」の2つの鍵〜「顧客の気持ち」と「顧客との絆」〜



全米一の大谷マニアで知られるFOXスポーツのアナリスト、ベン・バーランダー氏は、8月に初来日し、日本での野球場のスタンドで目にした光景に大きな感動を覚えた。

それは、「ビール売り子」とも言われる「ビール立売スタッフ」だった。

このことを知り、ネット記事を探した。
そして、考え方や方法で、売上数が全く異なることを知った。

「売上トップの鍵」について2つの視点から紹介しよう。

①顧客の気持ちを想像する
例えば、団体顧客への販売。
新人の場合、団体顧客が席にくるや否や積極的に声をかけるが売れず、早々に諦める傾向にあるという。
一方、売上トップのスタッフは「席決め等、落ち着くまでビールどころではない」と顧客の気持ちを想像し、つかず離れず微妙な距離を保ちつつ、顧客側から声がかかるのを敢えて待つ。

また、上段の座席の顧客への販売。
上段の座席には、スタッフはほとんど行かないという。
背負うタンクが15キログラムと重いからだ。
しかし、顧客側からすると、「わざわざ階段をおりてビールを買うのも億劫」だ。

顧客の気持ちを想像し、行動に移せるかどうかが鍵となる。

②顧客との絆をつくる
例えば、逆転ホームランで客席が一気に沸く瞬間。
新人の場合、売上を伸ばすチャンスとばかりに懸命に声をかけるという。
一方、売上トップのスタッフは観客と一緒に盛り上がる。時には、観客の隣で観戦を続ける。
この間、ビールの売上は止まるが、同じチームを応援する一員として絆を深めることで、結果として、次回以降の常連を増やすことにつながる。

目先の売上よりも、顧客との絆を重視する。

この「顧客の気持ちを想像する」と「顧客との絆をつくる」は、次の書籍を思い出させてくれた。

それは、「目に見えない資本主義(田坂広志著/東洋経済)」だ。

著者は、こう投げかける。
「どうすれば顧客に買わせることができるか、という『無意識の操作主義』に陥っていないだろうか」と。

そして、こう続ける。
「商品を売る側と買う側の対立的な関係でなく、主客一体の心得・おもてなしの文化・一期一会の精神こそが大切」と。

小学6年生の自由研究「どうして、きょうだい喧嘩が起きるのか」からの素敵な贈り物



今、SNSで、小学6年生の長女の自由研究が、「神自由研究!」「鋭い!」と話題になっている。
その自由研究のテーマは「どうして、きょうだい喧嘩が起きるのか」。

研究対象は、11歳の長女本人と、8歳の長男、5歳の次女、3歳の次男のきょうだい全員だ。
「毎日絶えない喧嘩が起こらないきょうだいになりたい!」という素敵な思いでスタートした自由研究は、原因と結果を棒グラフにデータ化した優れものだ。

喧嘩の数は100バトルで、夏休みということもあり、10日ほどで到達している。
長女本人が喧嘩中も、怒りながら、冷静にメモを取っていたという。
何とも微笑ましい光景が目に浮かぶ。

研究結果の一部を紹介しよう。

◆誰が一番喧嘩をしているのか⇨1位:長男(85回)、2位:長女(47回)
◆喧嘩の原因は何が多いのか⇨1位:たたく(26回)、2位:取り合い(20回)
◆どの時間が喧嘩が起こりやすいのか⇨1位:昼(39回)、2位:夜(38回)

この結果を見て、
長女は「やっぱり長男だった」と語る。
それに対して父親は「予想通りの結果でも、予想通りの結果が得られたというひとつのデータは価値がある」とコメントしている。
まさにその通り、だと思う。

ロジカル・シンキングという言葉をよく聞く。
ビジネスにおける課題解決に役立つ思考法の一つで、日本語では「論理的思考」という。
特に、ロジカル・シンキングを学んで向上するスキルは、分析力だと言われる。

事象や課題を分類して考える。
原因と結果を把握し、因果関係を確かめる。
分析に対して、対策やとるべき行動を明確にする。

多面的、客観的に課題の本質を分析し、解決する力は、ビジネスだけではく、生きる上での大切な能力と言えるのではないだろうか。

小学6年生の自由研究が、ロジカル・シンキングの大切な要素であふれている。
率直に素晴らしい、そう思う。

研究シートに家族のコメントが記されている。
次男の次の言葉に目が潤んだ。

「みんな大好きだよ」

家族愛に満ちた自由研究から、何とも言えない「温もり」を感じた。

黒川温泉物語〜発展の鍵は「垣根を超えた一体感」と「ビジョンの力」〜

熊本県黒川温泉は、全国屈指の人気を誇る。
今は、かつて存亡の危機があったとは信じられないほどの盛況ぶりだ。

その秘密は何だろう。

そのキーワードは、「垣根を超えた一体感」と「ビジョンの力」だ。

当時、黒川で、祖母が経営していた旅館を見事に人気温泉として立て直した人物がいた。
その人物は後藤哲也氏。

「お客様に来ていただくには名物がいる」と旅館の裏にある岩山を3年かけて掘り進めて「洞窟温泉」を作り上げたという。

それを機に、後藤氏と他の旅館の主が侃侃諤諤話し合い、各旅館の「垣根を超えた一体感」から生まれたアイデアが入湯手形だった。
お客様が定額の手形を購入し、その手形で黒川にある旅館の中から好きな温泉を3つまで自由に選んで入ることができる。
「宿泊施設」と「入りたいお風呂」を好きなように組み合わせできる嬉しい取り組みだ。

この方法が、露天風呂のない旅館にもスポットライトが当たり、黒川温泉全体の活気につながった。

そしてさらに、黒川温泉ブランドを強固にしたのが、黒川温泉一旅館という「ビジョン」だ。
「街全体がひとつの宿、通りは廊下、旅館は客室」として共に繁栄していこうというビジョンが旅館の垣根を超えた一体感から生まれた。

全体の繁栄があってこそ、個が生きるという素晴らしい考え方だ。

結果、黒川の温泉郷一帯が黒のカラーで統一され、街全体が情緒あふれる落ち着いた雰囲気に変わった。

その後さらに、ブランドに恥じない黒川らしさの基準をまとめ「街づくり協定」を締結した。

ふるさとの自然と暮らしを守り、優しさにあふれた黒川温泉をめざすためのものだ。

あえて団体客は避け、個人客をターゲットとする受入体制。
小型車がやっと走れるほどのメインストリート。
黒川オリジナルの土産品へのこだわり。
天然素材を使用したシャンプー、石鹸の使用。
・・・。

ひとつひとつの「打ち手」が、ビジョンに向かって紡がれている。
生き生きしたストーリーになっている。

旅館の垣根を超えた一体感から生まれたビジョンと、その実現のための協定をもとにした地道な取り組みが、「日本温泉遺産100」「日本環境協会会長賞」「都市景観大賞」「ハイ・サービス日本300選」など、数々の賞にもつながった。

関係者はこう語る。

「大切な文化や自然を再発見し、全員が協力して手入れを繰り返し、世代や立場を超えた取り組みに価値がある」と。

今も、温泉街全体がまるでひとつの旅館のように、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

黒川温泉物語は、ビジネスやチームづくり、地域貢献活動など、様々な取り組みのヒントを秘めている、そう感じた。

「ヤマハの商品開発」に学ぶー「捨てる勇気」と「揺るぎない軸」と「問い直し」ー

 

ヤマハ浜松市に本社を置く総合楽器メーカーだ。
ピアノやギターといった楽器や音響機器などの製造、販売を行なっている。
また、国内外での音楽教室も有名で、新興国での楽器を親しんでもらう活動も展開している、という。

先日、ネット記事で、ヤマハの現社長、中田卓也さんの記事を読んだ。
そこで印象に残った言葉が、これだ。

「捨てる勇気」

続けて、こう語っている

「商品開発は、つい足し算になりがちだが、不必要な部分を削れば、絶対に譲れないところに力を集中できる」

確かに、テレビでもパソコンでも、作り手のこだわりが強すぎ複雑になりすぎて、消費者にとって魅力を感じない商品も少なくない。
これは、商品開発だけでなく、経営やチームビルディングにも通じる。

「引き算する勇気(岩崎邦彦著/日経ビジネス人文庫)」という書籍がある。

引き算によって本質的な価値が引き出され、人を引きつけることができる、引き算がチカラになる、と筆者は語る。
そして、「引き算するためには、しっかりとした軸が必要である」とも。

捨てる勇気をもって、絶対に譲れないところに力を集中するためには、「軸」が必要なのだ。

では、自分の中の「軸」を強くするためには何が必要だろうか。

「1日1話 365人の仕事の教科書(致知出版社)」の中で、断捨離で有名な、やましたひでこさんは、次のように語っている。

「断捨離は実は、モノを通した思考の片づけなんです。そして、それをするためには、モノの片づけ以前の価値観の問い直しが必要なんです」

「価値観の問い直し」

続けて、やましたさんは、問いかける。

モノを取っておこうという気持ちがあるのは、そのモノに価値観を感じているから。
では、その価値について、本当にきちんと思考しているだろうか。
無意識、無自覚に採用した価値観で思考はストップしていないだろうか。
意図的に、選択しているのであれば、それはOK・・・、と。

同じ書籍の中で、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんも、こう語っている。

ヒット商品を生み出すには、商品の本質を見抜くこと。
そのためには、前提を疑うこと。
ただ、一度疑ってみたけど、やはり正しかったということは十分あり得る。
大事なのは、そもそも、これでいいのか?と、その前提が正しいかどうかを一度検証してみること。
過去の習慣や常識にばかり囚われていては、それ以上のアイデアは出てこない・・・、と。

価値観を問い直してみる。
前提を疑ってみる。
同じ選択になったとしても、それはOK。

そのプロセスこそが、意識・自覚を強め、揺るぎない「軸」をつくっていく。

不安解消法!「自分のトリセツ(取扱説明書)づくり」は「自分らしさ」を発見できる「自分さがし」。



「取扱説明書(トリセツ)」は、家電などの手引書のことだが、今、自分自身の扱い方をまとめた「自分のトリセツ」を作る人が増えている、という。

自分の毎日の行動とその時の気分。
機嫌の良い時と悪い時の気づいた傾向。
自分の大切な考え方やポリシー。
・・・など。
自分を客観的に見て、思いのまま綴っていく。

今、世の中は、新型コロナ感染など、予測のつかないモヤモヤ感漂う現実にある。
なんとも言えない閉塞感に、不安や迷いで気持ちが落ち込む人も多いのではないだろうか。
こんな時こそ、自分を知って、自分を理解して、自分を信じることが大切なのだろう。

でも、自分を知り、理解して、信じることは簡単なようで難しい。

自分がご機嫌な瞬間って、どんな時なんだろう。
自分の本当に好きなこと、やりたいことって何なんだろう。

私も「トリセツ」とまではいかないが。この10数年、毎年同じ手帳を買って、自分の行動や思いを綴っている。
そして、「書くこと」の偉大さを実感している。

自分の頭の中だけでは、堂々巡りに陥ることが多い。
しかし、実際に書くこと、言語化することで、「ブレない思い」や「大切にしている価値観」が見えてくる。
そうすると、不思議と、なんとも言えない安心感が湧いてくる。

歌手だった西野カナさんのヒット曲、「トリセツ」を聴いた人も多いだろう。
乙女心を取扱説明書になぞらえたラブソングだ。

「急に不機嫌になることがあります」
「定期的に褒めると長持ちします」
「何でもない日の ちょっとしたプレゼントが効果的です」
・・・など、キュートでユニークな歌詞が人気を呼んだ。

西野さんは、この曲を作る時に、男女、年齢、いろんなタイプの人にそれぞれの私のトリセツを書いてもらった、という。
リサーチをもとに統計をとり、よりリアルな内容を追求した西野さんの次の言葉が印象的だ。

「やっぱりみんな違うトリセツになるのが当たり前。
この曲の歌詞が全然当てはまらない!
ここは合ってるけどここは違う!
・・・といろいろ意見があっていいと思う」

そう、それぞれ違って当然だ。
モノではなく、人なのだから。
トリセツづくりは。「自分らしさ」を発見できる「自分さがし」。
それがいい。

「秋の読書習慣」と「直木賞作家 今村翔吾まつり旅」に思う、「やってみよう精神」の大切さ



全国の出版社や書店など、幅広く参加する「秋の読書推進月間(仮称)」が、今秋、開かれる予定だ。
「読書の秋」と呼ばれる時期には「読書週間」や「読書の日」など、様々な活動が展開されてきたが、今回の読書推進月間は、期間を10月27日から11月23日まで、28日間と大幅に広げるという。

取り組みの背景には、出版不況と書店の減少があるようだ。
2021年の紙の出版物の売り上げは、ピークだった1996年の3分の2以下にとどまる。

電子書籍もいいが、紙の匂いや温もりを感じながら、実際本を手にとって読む時間は格別だ。
健全な危機感からの取り組みが、より良い方向に向かうことを願う。


今、直木賞作家の今村翔吾さんが、全国47都道府県の書店や学校をめぐっている。
「今村翔吾のまつり旅 47都道府県まわりきるまで帰りません」と名づけた旅だ。
講演会やサイン会を通して読者や子どもたちと交流し、業界を元気づけようとしている。

今村さんは、幼少期、「本嫌い」だったらしい。
好き嫌いが逆転したのは小学5年の夏。
近所の古書店にあった一冊の本との出会いが、今村さんの人生を変えた。
その本は、池波正太郎の「真田太平記」だった。
夢中になり、その後、「歴史」と名のつく本はなんでも読みふけった。
さらに作家への憧れが募り、高校の卒業文集に書いた将来の夢が「作家」だった。
32歳で夢が現実になり、その5年後、直木賞を射止めた今村さんの次の言葉に説得力を感じる。

「夢を持つ大切さを子どもたちに伝えたい。やりたいことを迷っている子がいたら、意外とおもろいからやってみ、と伝えたい」
「たまたま目に入ってきた本が人生を変えるかもしれない」

今村さんは、こう続ける。
「今後、挑戦したいテーマは坂本龍馬。まつり旅で、地球1週分歩いたと言われる龍馬の肌感覚がつかめると思う。道中ばっかり書く龍馬もおもろいかもしれん」と。

少年のような今村さんの笑顔が印象的だ。
人生、やってみなければわからない。
やらない後悔より、やって後悔する方がいい。
そう感じた。

「やってみよう精神」が、夢や可能性を広げていく。

「世界最高齢の太平洋横断」と「養生訓」と「人と人との交流」



海洋冒険家の83歳、堀江謙一氏が世界最高齢での単独無寄港の太平洋横断に成功したのは記憶に新しい。
69日間にわたる米サンフランシスコからの航海は、困難な連続だったが、長年の経験と不屈のチャレンジ精神で乗り越えた。

「たくさんの支援や声援をもらいゴールできた」と語った堀江氏。「人生は長生きするといいことがある」とも。

堀江氏は、1962年、23歳で兵庫県西宮市から94日間かけて米国まで航海し世界の注目を集め、その後も単独無寄港世界一周などの挑戦を重ね、長距離航海の成功は12回にものぼる。
成功要因は、堀江氏の想像を絶する精神力と技術力はもちろんだが、周りの「人」の存在も、大きかったに違いない。

今年1月、読売新聞の「よみうり寸評」で、江戸時代の儒学者貝原益軒の記事を読んだ。
貝原益軒が養生について書いた「養生訓」には、かくしゃくとした自身の様子がつづられていることを知った。

「83歳になっても、まだ夜に細字を書いたり読んだりし、歯も一本も抜けていない」と。

養生訓では、子が時々親のそばで話をするよう勧めている。
運動や栄養に加え、人との交流も予防に役立つ、との記事に見入った。

いつの時代も「健康寿命」は世の関心事であったのだろう。
そして、「人」の存在、「人」との交流の大切さも。

「ソーシャルイノベーション社会福祉法人佛子園が『ごちゃまぜ』で挑む地方再生(ダイヤモンド社)」にも、人の交流についての意義が書かれている。

高齢者は高齢者だけ、子どもたちは子どもたちだけという縦割りではなく、異なる世代の人と人とのつながりが、大きなエネルギーを生むという。

コロナ禍の今、感染防止対策を行った上で、あらためて「人とのつながり」の意義を考えたい。

堀江氏は、こうも語っていた。

「今も青春真っ只中の気分です」

「人」から「人」へ。
元気が伝播していくメッセージだ。